初代女子ボクシング(JWBC)フライ級王者の八島有美です。と言っても私がチャンピオンになったのは2002年のことだから知らない人も多いかもしれないですね。もしかして、まだ生まれてなかった人もいるかも…。
今回、こちらのサイトで連載を始めることになったので、よろしくお願いします。
まずはボクシングを始める前、格闘技の世界に入るきっかけとなった出来事から。
私が格闘技を始めたきっかけ、それは、とある親友が関係している。あれは20歳前後のことだっただろうか。
当時彼女はDV被害者で、キック系の格闘技を習っている彼氏にいつも殴られたり、蹴られたりして、腕や脚には常に青アザ。時には顔にアザがあるというようなこともあった。それに対抗するためか、防御を覚えたいためか、彼女は空手を習いたいという。今思うと、そんな彼氏、すぐに別れた方がいいと思うのだが、私は大道塾という流派の空手道場に付き添いで同行した。
中学時代は美術部、高校時代は演劇部と、全くの文化系人間だった私だが、幼少の頃は仮面ライダーやヒーローごっこが大好きだったので、見ているうちにパンチやキックへの憧れを思い出す。
「あんなにカッコよく闘えたらいいなぁ。やっぱり私も強くなりたい」
即、彼女と一緒に入門を決定。そして、よくある話なのだが、当の本人よりも付き添いで付いて行った方がすっかりハマってしまったのだ。
「強くなりたい」確かに潜在的な願望はあったのかもしれないが、どうして私はそこまで格闘技にハマってしまったのだろうか。
よく言われていること、
「ボクサーは馬鹿か不良か貧乏」最近はそうではない選手も多いのかな。気を悪くされた方がいたら申し訳ない。
でも私の場合は正に貧乏で、親の愛情も感じられない冷たい家庭で育った。大学には進学したが、資金は奨学金やバイト。入学金を作るため、高校時代に年を誤魔化して水商売をやったりもした。
大学では、お洒落な学生達がお洒落な洋服を着て、お洒落に飲み会。私は浮いているような気がしていた。なんとか無理をして大学に入ってはみたものの、常に感じていたのは貧乏人の小娘が紛れ込んでいるような場違いな感覚と劣等感。もしかしたら、周りはそうは思ってなくて、全て私の被害妄想だったかもしれない。だが、そのうえ人とのコミュニケーションも苦手だった私は、周りの世界がいつもフィルター越しに見えるようだった。現実ではないような、ふわふわしたような感覚。生きてるか死んでるか分からないような鈍い感覚。ボーッと日々を過ごしていた。
それが格闘技を始めてから、一変した。フィルター越しのような、水槽の中にいるようなボヤけた世界が一気に現実のものとなった。殴られた時の痛み、やらなければやられるという緊張感。喋らなくても、闘うことで人とコミュニケーションがとれる。言葉はないが、何の偽りもない、誤魔化すことの出来ない関係。
それは新鮮な経験だった。当然だが、殴られれば痛い。こんなことを言うとおかしいと思われるかもしれないが、それが心地良いのだ。なんというか、生きているという実感。そして殴られた痛み、ローキックを喰らった痛みがその後何日間も続き、アザが残り、足を引きずりながら生活したりする。立ち上がる時にも、鈍い痛みが走る。その痛みによって
「ああ、生きてる。私、頑張ってるんだなぁ」という気持ちになれる。もしかしたらこの感覚は、自傷行為に似てるのかも、と思ったりもする。
私はやったことはないけど、周りに何人かリスカの跡がある友人がいるから今度聞いてみようかな。こんな事を聞くのはちょっと勇気がいるけど。
勿論、やられるのが好きという訳ではなく、自分のパンチや蹴りがヒットした時の爽快感にも虜になった。相手にダメージを負わせたり、試合に勝つ方がいいに決まってる。
まぁそんな訳で、私はボクシングを始める前に大道塾という結構ハードな団体で空手にハマり弐段を取った。
その後、空道という武道になる大道塾だが、当時はまだ格闘空手を謳っていて、フェイスガード越しながらも顔面パンチを許された数少ない流派であった。そのため、ボクシングへの適応も比較的スムーズだったように思う。基本的なスタンスや構え、パンチの角度、ディフェンス、フットワーク等、共通するものも多い。フェイスガード無しでの打ち合い等、多少の抵抗感もあったが、何もやっていないよりは遥かに有利だったのではないだろうか。打撃への恐怖心は殆ど感じたことはなかった。
そして何より(自分で言うのは躊躇われるが)、パンチの硬さ。相手選手が「石を握ってるんじゃないか」と言っていたこともあるそうで、これは大道塾時代にいつも素手でサンドバッグを叩いていた賜物だと思う。ボクサーは基本グローブをはめてサンドバッグを叩くが、空手家はだいたい素手で叩く。これにより拳がより硬くなるのではないか。はっきり実証した訳ではないが、私は勝手にそう思っている。
このように現実の社会で生きづらかった私も、殴り合いの中にようやく居場所を見つけた思いであった。これもまた私の偏見に満ちた持論であるのだが、だいたいボクサーや格闘家は現実の社会で問題を抱えてリングに辿り着く人が多いのではないか。勿論、そうではない人もいるのだけれど。
世の中に問題を抱えていない人間などいないのかもしれないが、ボクサー、格闘家の闇は深いなぁ、と改めてそう思うのである。
以上、今回は私が格闘技にハマった理由。
個人的な感想なので、多少の偏見はお許し下さいね。
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