どういう事態?
3月23日に行われたONE Championship(以下ONE)が物議を醸している。事の起こりは大会後の記者会見でのことだ。ONEのチャトリ・シットヨートン(Chatri Sityodtong)代表が行われるはずだった海人・グレゴリアン戦について、出場を辞退した海人選手を非難したためだ。チャトリ代表の発言にグレゴリアン選手も乗っかる形で海人を非難した。これに対して、海人と所属団体のシュートボクシングが抗議文を出し、それに対して、ONE側が公式声明を発表している。
ここではこの事態について検証していく。かなりの長文となるので、先に結論を言うと、グレゴリアン選手の計量ミスはONE側も認めている。海人選手はルールに書かれていないキャッチウェイトをやった方が良かったと難癖をつけられているだけ。というものだ。
シュートボクシング協会の抗議声明
https://shootboxing.org/news/32884/
ONEの公式声明はこちらから
グレゴリアン選手の声明
https://www.instagram.com/p/DHoxTDvMKvd/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
公式声明はチャトリ代表の発言に対する謝罪であり、今回の事態についての謝罪ではない。発言内容が不穏当だと言っているに過ぎない。これに対して、海人側は更なる抗議を行っている。
何が問題?
ONE側と海人側では論点が噛み合っていない。
ONE側は、計量、ハイドレーションテストには問題がない。キャッチウェイトでやるかどうかは委ねられている。だが、チャトリ代表の声明にある「世界の主要団体では・・・」、「当然ながら」という部分からはキャッチウェイトでやるのが当たり前という意識だったのだろう。
一方、海人側は公式計量の時間に来なかったのだから、そもそも失格である。グレゴリアン選手のハイドレーションテストは第三者が見ておらず、公式なものとは認められない、というものだろう。
これらを見比べてみると、両者の視点が全くかみ合っていない。
結論から言えば、グレゴリアンが悪い
噛み合わない理由は、公式計量後に行うハイドレーションテストは問題か否かだろう。そこで、ONEのルールブックを見てみたい。
ONEのルールブック
https://www.onefc.com/martial-arts/
ONEのルールブックでは、ハイドレーション・計量に失敗した場合は、再計量できるとある(If the athlete passes hydration but fails to make weight, then he or
she may try again within the allotted 3-hour testing window.)。
ここで問題になるのは時間だ。実は、ルールブック上は公式計量に来なくてはいけないとは書かれていない。大会の24時間、48時間前に計量・ハイドレーションを受けなくてはいけない(All athletes will participate in a combined hydration test and
weigh-in 24 to 48 hours before the event.)と書かれているのみだ。規定時間が何を指しているのかは、ルールブック上は分からないし、公式計量に来なければいけないとは書いていない。とはいえ、医療従事者の前でテストを行う(Hydration will be checked through a urine specific gravity test in
which every athlete will submit a urine sample under the supervision of a
medical technician.)と書かれているので、公式計量、もしくは大会関係者の前で見せるのが当然だろう。
では、グレゴリアン選手はどうだったのかと言うと、公式計量終了後30分後にテストを行なったとインスタの声明にはある。14時に海人に伝えられたという文章からは、少なくとも14時には終了していたということだろう。
ここで問題になるのが、ルールブックにある24時間前とはいつからというものだ。シュートボクシング側は11時から13時を規定時間としている。グレゴリアン側は14時でも規定時間内と見ていたと言える。ここで食い違いがある。
実はこの点については、ONE側もシュートボクシング側を正しいと見ている。3月25日のチャトリ代表の声明には「グリゴリアン選手は制限時間を過ぎてハイドレーションテストをクリアし、350グラムの体重オーバーとなりました。」とある。
計量・ハイドレーションテストに失敗した場合は、3時間以内にパスしなければならないとしている(If the athlete passes hydration but fails to make weight, then he or
she may try again within the allotted 3-hour testing window.)。
今回の場合、制限時間がいつから始まっているのかは不明だが、キャッチウェイトでの交渉が行われたということなので、制限時間後3時間は満たしていると見ていたのだろう。
とはいえ、この点では制限時間を満たしていないことには変わりはない。
さらに問題になっているのはハイドレーションテストがどのように行われたかというものだ。シュートボクシング側の抗議声明によると日本側の医療従事者は退室していたとあり、ルールブックにある「医療従事者の前で(under the supervision of a medical technician」を満たしているかは分からない。日本人以外の医療従事者が居たかもしれないが、その点は不明なままだ。
キャッチウェイトで応じないといけないのか?そうなら、ルールにすべき
一つだけルールブックに書かれていて、明らかに無視されていることがある。それはキャッチウェイトの問題だ。チャトリ氏の3月25日の声明ではキャッチウェイトで行うのが当然というニュアンスで書かれている。
しかし、ルールブックにあるのは、キャッチウェイトを交渉できるというものだ。格闘技スポーツにおいて、重さは重要な要素だ。だから階級分けがされている。1ポンドであればOKが通用しない。正直、チャトリ代表やグレゴリアン選手が海人選手を非難する権利はどこにもない。
海人選手はルールブックにある権利を行使しているだけだ。交渉できるが、キャッチウェイトでするとはどこにも書かれていない。「世界の団体では1ポンドはキャッチウェイトでするのが当たり前」、とかそういう理屈は通用しない。もし、チャトリ氏が本気でそう思っているなら、ルールブックに記載すべきだろう。1ポンド以内はキャッチウェイトで行うと書けば良い。ルールに書いてある以上、周りがどうこう言う話ではない。